株主総会にあたり事前質問をしてみたいけど、どう書いていいかわからない、という人の参考になればと思い、先日パリミキホールディングスへ送付した質問書をそのまま掲載してみました。会社の方々については調べればわかってしまいますが、個人名は全て伏せ字にしてあります。
質問内容や書式に決まりはありませんが、数字や発言内容などを使用、引用する場合はソースも付記しておくと親切ですね。あとは、あまり直前だと回答してもらえない場合もあるので、余裕を持って送ったほうがいいでしょう。
あと、細かい事ですが、株主なので本来は「貴社」ではなく「当社」といった方が正しいかもしれません。ただ、当社と言うと“MY” companyと言っている感じがして自分にはややこそばゆいので、ここでは貴社で通しました。どちらでもいいのですが、どちらも違和感がある場合は会社名を使っておけば無難かと思います。
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2024年5月23日
株式会社パリミキホールディングス
代表取締役社長 XXXX様
XXXXXXXXXXXXXXXX
XXXXX
XXXXXXX@gmail.com
XXX-XXXX-XXXX
事前質問書
初めまして、株主のXXXと申します。貴社の成長性に期待をし、応援したいという気持ちから貴社株式を購入しました。現在XX,XXX株を保有しております。
先般の株式会社ルネットからの資産運用事業承継について、判断の合理性やガバナンス等についてやや疑問に思うところがあり、今後も長期的に応援していく為に不安を晴らしたいという思いから、事前質問をさせていただく事にしました。お忙しい中恐縮ですが、ご回答いただければと存じます。
1.
パリミキアセットマネジメント(以下パリミキアセット)とParis Miki Internationl SA(以下PMI)の子会社化に関する一般的な質問。
- パリミキアセットは、かねてよりパリミキ店舗でのセミナー開催、関連会社や社員の資産運用など通じてパリミキHDと業務的な連携を行なっています。また、今回の資産運用事業の承継決定時点では、資産運用事業は眼鏡事業とは独立した部門として運営され、パリミキHDとシナジーを産むような具体的な計画も特にないと聞きます。パリミキアセットとPMIをあえて子会社化する事で、一般株主にはどのような恩恵があるとお考えですか。
- 2030年度までに、パリミキアセットの事業規模をどれほどまで大きくしたいと考えていらっしゃいますか。
- 本来、2024年4月を予定していたパリミキアセットの子会社化が7月にまでずれ込んだ理由を教えてください。
- 貴社は業績回復、そして再成長に向けて全力で取り組んでいる他、企業価値最大化に向けての様々な施策も打ち始めています。これらが奏功すれば株価の上昇が見込まれ、資産運用事業の承継にあたり株式会社ルネットに差し出す貴社株式の数は4.85百万株より少なくて済んだものと思われます。それにも関わらず今資産運用事業を承継したのは、今後も貴社の株価は上がらないという認識があったという事でしょうか。独立役員のお二人はこの点について一般株主の立場に立って意見をされましたでしょうか。
2.
PMIについて
- PMIの総資産は2021年12月期から2023年12月期にかけて、CHF26,573、CHF19,876、CHF15,837と大きく減少(注1)していますが、この要因についてご説明をお願いします。
- PMIの保有する投資資産の具体的な内容(株式、債権、国籍 etc)について以前質問した所、グループ傘下で運営していくにあたり、適切なリスクプロファイル、精査をする事で今後変化が生じる可能性が高く、公表はできないという事でした。吸収分割の効力発生日が目前に迫った今(第76回定時株主総会開催日)、公表ができる状態になっていれば公表をお願いします。
3.
資産運用事業の承継を決定した理由について
- 2024年5月13日付けの吸収分割契約に関するお知らせで、「近年の市場環境や日本の社会情勢の変化を踏まえ、当社として資産運用事業への本格的な参入の検討を進める中で、ルネットが築いてきた資産運用事業は、当社の1973 年のパリ店出店当時の当社経営者の構想を実現したものであり、お客様に『トキメキ』と『あんしん』を提供するという当社の理念に合致するところが多く、当社が新たに事業を立ち上げることや他社買収の選択肢と比較した場合に、ルネットの資産運用事業を当社が承継することが、最良の選択肢であるとの結論に至りました。」(注2)とありますが、眼鏡事業への投資(店舗改装、移転、新設、機材購入、人材投資 etc)という選択肢とは比較されましたでしょうか。
2023年5月12日に更新された中期経営計画では、2030年度にROE11.2%を目指しているとあります(注3)。また、同中計では資産運用業については触れられていない為、このROEは眼鏡事業によって達成するつもりであったと判断されます。この事から、直近のROEが5.8%である事を考えれば、2023年度までの期間において眼鏡事業への投資から期待できるリターンは11%よりも高いと経営陣は考えていたものと思われます。資産運用事業への投資から期待できるリターンはこれよりも相当低いと考えておりますが、独立役員のお二人は、「ルネットの資産運用事業を当社が承継することが、最良の選択肢である」であるという結論が妥当だと思われますか。理由とともにお教えください。
4.
ROEについて
過去3年間について、パリミキアセットの純利益は、事故損失賠償関係の27百万円について調整しても、平均¥20百万程度(注4)。また、PMIについては、過去3年間の純利益平均は¥15百万(1CHF = JPY170で計算)程度となっています(注5)。これらの合算値は¥35百万であり、二社の純資産の合計値である約24億円(注6)を分母に取った場合のROEは1.5%に足りません。今後見込まれているパリミキアセットの増収が寄与し、仮に二社の合計純利益が¥50百万になったとしても、同様にして計算されるROEは2%です。このように、資産運用事業のROEが眼鏡事業に比べてかなり低い事を踏まえて、以下の質問をいたします。
- 2023年5月12日更新の中期経営計画で11.2%とされていた2030年度時点での目標ROEが、2024年5月13日の更新により10%になっています(注7)。これは資産運用事業の低ROEを反映したものですか。
- 資産運用事業のROEは2030年度までにどの程度を目指していますか。
- 貴社は中期経営計画及び決算発表会などの場においてROEの向上を目指す姿勢を見せる一方で低ROEの資産運用事業を取り込むなど、ビジネス上の判断に一見ブレが見られます。この点について独立役員のお二人はどうお考えですか。
- ROEと株価の間には正の相関関係があることは経済産業省の通称伊藤レポート(注8)など多くの研究結果によって支持されていますが、ROEの低下によって株価に下落圧力がかかる事について、独立役員のお二人は議論なされましたか。また、取締役会で問題提起しましたか。
5.
ガバナンス改善について
貴社独立役員であられるXXXX氏、XXXX氏は過去10年間において株式会社ルネットの取締役や監査役を務めるなど独立性が高くなく、一般株主としてはガバナンス上の不安を感じざるを得ません。
貴社は多根幹雄氏を始めとする創業家の親族、及び関連会社によって過半の株式が所有されている事から、大株主と一般投資家との間で利益相反が起きやすい土壌が形成されています。そのため、一般投資家が安心して貴社へ投資するためには、一般株主の利益保護の為に全力を尽くしてくれると信じられる独立役員の存在が不可欠だと考えます。両氏は実質的に独立していると仰られるかもしれませんが、一般株主の不安を取り除く上で、見かけ上の独立性を担保することが有効であるのに変わりはありません。
そこで、今後はXX氏とXX氏の両氏は取締役ではなくアドバイザーという立場で引き続き貴社の運営に対して助言をいただき、独立役員にはより独立性の高い方を置かれてはいかがでしょうか。
バークシャーハザウェイのウォーレン・バフェット氏は、2020年2月22日付の株主への手紙の中で、「CEOが取締役を探す時、求めているのはピットブルではない。家に連れて帰るのはコッカースパニエルだ」(注9)と、真に独立な取締役がCEOから人気がない事を風刺しています。
また、XXXX会長は「あいのりblog」への投稿(注10)で、PBR1倍割れの企業が市場からの評価を高める為に本腰を入れる事を期待しているという趣旨の発言をされています。
貴社取締役の皆様がピットブルをメンバーに加える事ができれば、市場はきっと貴社の「本腰」に反応し、評価を見直すきっかけとなると思います。ぜひご検討ください。
<以上>
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(注1) 、(注5)、 (注6)
「株式会社ルネットとの吸収分割契約の締結並びに親会社の異動及び特定子会社の異動に関するお知らせ」 P. 9
(注2)
「株式会社ルネットとの吸収分割契約の締結並びに親会社の異動及び特定子会社の異動に関するお知らせ」 P. 2
(注3)
FY2022-2024 中期経営計画(2023.5.12 更新)P. 8
(注4)パリミキアセット損益計算書
(注7)
FY2022-2024 中期経営計画(2024.5.13 更新)P. 4
(注8)
経済産業省(2014).「持続的成長への競争力とインセンティブ ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト (伊藤レポート). https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/pdf/itoreport.pdf
(注9)
“When seeking directors, CEOs don’t look for pit bulls. It’s the cocker spaniel that gets taken home.”.
Warren. E. Buffett. 2020. Berkshire Hathaway INC. Shareholder letters. https://www.berkshirehathaway.com/letters/2019ltr.pdf.
(注10)
多根幹雄. (2023, Jun 9). あいのりblog [★「日本株買いはホンモノか」]. https://pmam.co.jp/blog/post_1619/
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